2007
10.07

SOS 第3章

もはや彼の脳裏には、DTとの別れの悲しさだけしか残ってない。

とどめを刺すようにスタッフAは「蹴っ飛ばして崖から落としてやっべ、そのうち土に返る」

「崖っぷち犬」と化したDTには救われる道は閉ざされた。犬は救われるのに。

 

あらためて救出にこよう!という彼の独り言か?問いかけ?は我々には聞こえなかった、ことにしよう。

もう、電灯無では歩けない暗く静粛な山道に彼の独り言だけがこだました。「来週の土曜日・・・deraと

一緒に・・・ん-、フォークばらして・・外装はずして・・・」 かわいそうなdera君。

店に帰ると、何人かのお客さんが待ち受けていた。

すると、どうでしょう!オヤジは水を得た魚のように、今日の出来事をみんなに面白おかしく

話してるではありませんか!しかも、来週一緒に救出作業を手伝ってくれる人足を募ったりして!

生きるって素晴らしい!さっきまで生死をさまよった人とは思えない、自分勝手なオヤジ。

「俺、足の骨でも折って、歩けなくて、携帯もつながらなかったら、捜索願いでてたべね。ガハッハッハ」

最後の最後までことの重大さに気がつかない「オヤジ」である。バカヤロー!

つづく

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