10.17
【カワサキオート山形】 Weblog
オヤジのご子息がごく最近、400ccのスポーツバイクを手に入れた。
「オヤジには絶対貸したくない、危なっかしいんで」と言っていた。
息子の留守になる日を確認して勝手に乗った。ばれないように。
しかし、「ガソリン満タンになっていたっけ、勝手に乗りやがった、あのオヤジ!」
律儀な方だ。
ただ、手段は「オフロードバイク」なだけ。
農耕民族の歴史を持つ日本人は働き者、食べる為に働く。
今はナンセンス。今は崩壊しつつあるが、終身雇用でのご時世、いかに楽に、無難に、定年を
迎えるかが最良の人生。仕事では責任重大、子供の成長を願い、家族団らん、親が歳老い、
看病しなくちゃ。
はちきれて遊ぶ瞬間は、人生の中でいかほどのものか?
楽しくやろう!ゴルフでもいい、山登りでもいい、なんでもいい、体が自由に動くのは何歳までか?
主人公S氏は、ちょうどその谷間の楽しい自分の時間を見つけてた。「バイク」で。
彼はハードな仕事を担ってる。体の調子が悪くとも、医者にもいけない。
先日、やっとの思いで検診にいった。ここが痛いとか、食欲無いとか、気持ち悪いとか、先生に訴えた。
本人は重い病気にかかってるものだと思い込み、常々、あと何年生きられっべか、
とポツンと真顔でつぶやくことが多くなっていた。
自分も彼のことは大好きで、ずっとお友達でいたいし、まだ一緒に遊びたい。まだ50歳前なのに・・・。
「あのヤブ医者、おれ具合悪いって言ってんのに、何にも悪くないといってあがる。血液も正常、
ガンマ何とかも正常、健康そのものだと!よし、まだバイク乗れる!今度のSUGO貸切はいつだ?
10/24?よ-し、会社休むぞ!」
二口峠で一回死んだ人生、何でもできる。SUGOで誰が餌食になるのか?
いつもの笑い声がカワサキオート山形の店内に響きわたり、周りのお客さんを笑顔に包んだ。
完
10/6土曜日の昼下がり、スタッフAの携帯に「店に誰かいねーが?」
つまり、今からボロバイクを引き上げにいくので、お客さんで手伝ってくれる人、店に誰かいませんか?
ということ。
店主の私でなく、スタッフAの携帯にTELするなんて、私に後ろめたい気持ちでもあるのだろう。
誰もいましぇ-ん!!!!一人で行ってこ-い!!!目じりが下がった寂しそうな顔が目に浮かぶ。
いやいや、同情などしちゃいかん。思い出した、その当日、店へ帰って熱弁してたとき、
「今度の土曜日、バイク引き上げてきたら、みんなで芋煮会でもすっべ!へへへ」 な、なにぃー!
いつまでも主人公でいるな!楽しいツーリングでも行ってきたかのように。
しかし、dera君は見捨てなかった。稲刈りをほっぽりだし、引き上げの御手伝いに現場へ。
解体作業はスムーズに進んだ。現場でエンジン、Gタンク、シート、他外装を取り外し、
車までの悪路1.5kmを往復、この光景を知らない人が見たら★?*”$+#。
エンジン背負ったオヤジの後姿は、芝刈り帰りの桃太郎のじいちゃんよ。
「いやぁ、山はいいなぁ、猿もいるし、鳥もピーピーって、気持ちいいーっ!」
相変わらず・・・。
つづく
もはや彼の脳裏には、DTとの別れの悲しさだけしか残ってない。
とどめを刺すようにスタッフAは「蹴っ飛ばして崖から落としてやっべ、そのうち土に返る」
「崖っぷち犬」と化したDTには救われる道は閉ざされた。犬は救われるのに。
あらためて救出にこよう!という彼の独り言か?問いかけ?は我々には聞こえなかった、ことにしよう。
もう、電灯無では歩けない暗く静粛な山道に彼の独り言だけがこだました。「来週の土曜日・・・deraと
一緒に・・・ん-、フォークばらして・・外装はずして・・・」 かわいそうなdera君。
店に帰ると、何人かのお客さんが待ち受けていた。
すると、どうでしょう!オヤジは水を得た魚のように、今日の出来事をみんなに面白おかしく
話してるではありませんか!しかも、来週一緒に救出作業を手伝ってくれる人足を募ったりして!
生きるって素晴らしい!さっきまで生死をさまよった人とは思えない、自分勝手なオヤジ。
「俺、足の骨でも折って、歩けなくて、携帯もつながらなかったら、捜索願いでてたべね。ガハッハッハ」
最後の最後までことの重大さに気がつかない「オヤジ」である。バカヤロー!
つづく